【第5回:美術編】素人でもできる!映画を作りたいあなたへ〜自主映画制作の道〜

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自主映画制作ハウツーシリーズ第5回目です。

 

今回は、プリプロダクションのなかの「美術」を解説します。

美術とは

映像での美術というと、テレビ局内のスタジオを作る大道具や小道具をイメージする人が多いと思います。

実際、映画における「美術さん」という方たちもスタジオのセットを組んだり装飾したり、というお仕事をしています。

 

カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した是枝監督の『万引き家族』という作品では、劇中で出てくる小さな木造の一軒家を、実際に建てられているものとそれを全く同じように作ったセットとの両方でロケをしたらしいです。

 

自主制作映画における美術がここまでするかと言われれば、スタジオセットを作り込んで大道具作りをするほどの規模の自主制作はなかなか始めやすいものではありません。

学生映画やサークル規模の撮影では、実際のロケ地にどのように装飾して作品を演出するかが美術に求められることです。

 

美術の作業

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美術の作業も脚本があがった時点で始動します。やはり監督との打ち合わせは入念にする必要があり、脚本を映像作品にしていく過程で表現したい世界観を共有しましょう。

美術の作業の一発目は意外と事務的で、「制作進行」の時に色々なリストを紹介しましたが、美術もまずリストを作る必要があります。

 

美術を担当する人と監督が集まって脚本を一から読み通していき、それぞれのシーンにどのような世界観があり、どのような物でそれを演出できるのか、それを美術リストの中に整理していきます。

整理しておくことで、作ったり用意した小道具が撮影当日になって持ってきていないことに気づくということも防げるでしょう。

 

美術リストができたらどんどん小道具を用意していきましょう。

 

美術の演出

脚本を映像化していくという作業の中で、カメラが映像として切り出すなら、美術はその切り出す世界の全てを作ると言っても過言ではないと思っています。

これが美術の演出で、俳優の演技指導は監督が仕切ることが多いため、カメラに映る俳優以外の全てのものは美術で担う必要があるということです。

 

美術の演出と言っても具体的にどのようなものがあるか、これは色々な方面に色々な持論がはびこっていそうなので一つに定義することは避け、僕がこれまで担当してきた美術でどのようなことを心がけて演出したか、から紹介していきます。

 

  • 脚本中の物を忠実に再現

    これは単純に脚本で出てくる小道具を集めたり作ったりする部分で、これまでに例えば、器用な設定の登場人物が折った「コンドルの折り紙」や手作りでボロボロの設定の「金属探知機(のようなもの)」を作ってきた。

  • イチから世界観を作る表現

    上の部分との違いが難しいのですが、これは現実にあるけど形を変えて作中に出したかったり、現実に全くないものを作り出したい時にする美術だと思っています。例えば、登場人物が非難されている「週刊誌の表紙」や実在しない「テレビ番組のポスター」などを作りました。

  • 色・形などのモチーフを使った表現

    これは上二つとは少し異なり、特に「衣装」との兼ね合いが必要になる部分ですが、作品の中で特定の色や形をモチーフにするという表現です。上手く演出すれば脚本の背景にある伝えたい部分をストーリーラインとは別のところで表現することができます。

このように様々な形で作品を演出できるのが美術なのです。

 

現場の美術

ここまでは撮影より前段階で進める作業で、美術の担当はそこで終わりではありません。

用意した小道具や装飾をロケ地に適切にセットするのはもちろん、それらを撤収するのも美術の役割です。

 

また、作品によっては血が出るシーンがあったり、傷を使った演出をしたかったりというものもあります。そのような時にも美術班が動きます。

のりを作ったり、傷メイクをしたりという技術も必要になります。

その方法はまた別の記事で紹介します。

 

まとめ

今回は美術が担うことのできる作品の演出を紹介しました。これを読んで美術の役割がわかったところで、どう作ればいいのだろうということになってしまうと思うので、追い追い実際にどのように小道具作りをしているのか紹介していきたいと思ってます。